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学校法人山崎学園 富士見中学校高等学校

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高2体験学習「北海道大樹町コース」

 高校2年生の体験学習、北海道コースです。
北海道を選択した生徒たちは、大樹町を舞台に「まちづくり」について感じ考えました。

 大樹町には民間ロケット射場があります。東側と南側が海で、1年間を通して晴天の日が多く、ロケットの打ち上げに適した地です。この町では、役場を中心にして、約40年前から、過疎化する町の未来を考え、新たな産業として、ロケット関連産業を取り入れたまちづくりが行われてきました。しかし、その道のりは平坦ではなく、様々な立場の方々が苦心して調整されてきた歴史がありました。生徒たちは、関係する事業者の方々と交流しながら、まちづくりの実態を体感しました。

 ロケット産業を中心にしたまちづくりに、皆さんが一様に賛同してすんなり進んできたわけではないようです。例えば、大樹町の基幹産業は酪農や漁業といった一次産業です。新たな産業を得ずとも酪農で生計をたてられるため必要ないと考える方もいらっしゃるようです。しかし、町に子供たちが帰ってこられるように、新たな人々が町に住めるように、産業や町の魅力を増やすためにとの想いで協力されている方々がいらっしゃることが見えてきました。
 また、漁業組合の方々はロケット事業に基本的に反対です。万が一ロケット打ち上げが失敗した場合に自分たちの海が取り返しのつかないことになりかねないからです。しかし、漁業組合の方々は、現在ロケット事業に協力されています。そこには、自分たちの海に落ちるロケット発射の残物を自分たちの手で回収し、次の世代に負荷を残さないという強い責任感があります。また、漁業の合間に行う新たなビジネスとして収入源を増やす狙いもあります。
 こういった実態を体感する中で、生徒たちは、まちづくりの複雑さを理解していきます。事前学習で、イメージしてきたまちづくりが、ここでしか得られない体験を通して、より濃く、重層的になっていきました。

 大樹町は「北海道に、宇宙版シリコンバレーをつくる」というビジョンを描きながらまちづくりを進めています。インターステラテクノロジーズという民間企業が大樹町に会社を置き、射場で民間ロケット打ち上げを何度か行っています。これにより雇用が創出され、人が流入し、町に動きが出ました。また、酪農では、牛の糞尿からメタンガスを生成し、バイオエネルギーに変え、ロケットの燃料に使用するなど、新たな事業も産み出されています。ロケットを取り巻く様々な動きが大樹町をより個性的に、魅力的にしていきます。生徒たちはこういったまちづくりのダイナミズムも体感して理解を深めていきました。

 最終日は地元の大樹高校とも交流させていただきました。高校生とお世話になった事業者の方々へ体験学習で感じ考えたことをまとめて発表、町の外から来た生徒たちだからこそ見える大樹町の魅力や課題を共有しました。事業者の方々が真摯に受け止め、町をより良くするために真剣に話を返してくださる姿に、生徒たちは、町をつくりそこで生活する方々の覚悟や生き様を体験したことと思います。
 現地の高校生が「私はUターンしてこの町で生活をしたい。Iターンの方を増やすことも大切だが、ここで生まれ育った子どもたちが、帰ってきたいと思える魅力ある町にしないといけない」と語ってくれました。同じ世代の高校生の言葉は、より響いたのではないでしょうか。事業者の方々も、こういった高校生の声に共感を示され、今後さらなる取り組みを進めていくことの意義を見出だされているようでした。
 最終発表会は本校生徒にとっての学びの場であることはもちろん、事業者の方々にとっても気付きの場となりました。事後学習で、生徒たちは体験から得た「まちづくり」のイメージを自分なりの視点で紙面にまとめます。(高2教員 杉原)