学校法人山崎学園 富士見中学校高等学校

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理事長・校長メッセージ

理事長メッセージ

創設者である山崎種二の
想いを受け継ぎ、
生徒たちの挑戦を
あたたかく支える学校でありたい。

理事長 山崎 二三恵

 本校創設者の山崎種二は米問屋の丁稚奉公からスタートし、倉庫業、証券業へと進出して成功を収めた人物でした。種二は優れた経営者である一方、私財を投じて故郷 群馬の図書館や道路の建設、日本初の日本画専門美術館「山種美術館」の創設など、ビジネスを通して社会課題の解決に取り組む社会起業家でもありました。種二がこのような事業に力を注いだ背景には、妻である「ふう」の存在が欠かせません。ふうは思いやりがあり、高い教養と自立した心を持った女性でした。彼女のような女性を育てていきたいという想いで種二が創設しましたのが学校法人山崎学園なのです。

 本校の建学の精神は「純真・勤勉・着実」。創設当初から変わることなく受け継がれている精神ですが、時代とともにその読み解き方は変化しています。私が種二や二代目理事長である山崎誠三から受け継いだ「純真」とは、信じるものをまっすぐに貫き通す強い心。人の価値判断に惑わされず、自分が正しいと思うことをひたむきに実践する。たとえ一度失敗しても、「勤勉・着実」を胸に、あきらめずにやり続けるからこそ、夢や志を実現できると思うのです。日々変化し続ける現代において、確固たる自分らしさを持ち、歩みを進めるために、今こそ「純真・勤勉・着実」の精神は大切な指針になるのではないでしょうか。

 実は、種二自身も多くの失敗を経験してきました。その中でも印象的な出来事が、初めて画商から手に入れた美術品が贋作だったこと。多くの人であれば懲りて美術品から遠のいてしまいそうですが、種二は「自分には絵を見る目はないが、人を見る目はある。素晴らしい人間が描いた絵は素晴らしいに違いない」と考えたのです。その後、種二は、横山大観をはじめ、後に名だたる芸術家となる優れた人間性を持つ多くの日本画家を支援してきました。このようなルーツを持つ本校だからこそ、生徒それぞれの挑戦を支えていきたいのです。つまずいたり、失敗しても大丈夫。この学校には温かく寄り添ってくれる教員や仲間がいます。

 私は祖父である山崎種二の生き方や考え方を読み解くうち、熱く優しい想いが込められた富士見中学校高等学校をますます大切に思うようになりました。2024年には善本校長を迎えました。本校は今後更に主体的な学びや体験を通して自分の人生を歩む自立した女性を育成し続けてまいります。

校長メッセージ

自由に、しなやかに、
人生を切り拓いていける
自立した女性の育成を目指して。

Profile

鎌倉女子大学教授から本校校長就任。愛媛県出身。東京大学卒。都立高校教諭、東京都教育委員会勤務を経て、都立白鷗高等学校・同附属中学校統括校長として、ダイバーシティ教育に取り組み、コロナ禍において、いち早く先進的なハイブリッド型オンライン授業を推進した。中央教育審議会第9期委員、文化審議会国語分科会委員等を歴任。東京都公立中高一貫教育校長会初代会長。2024年7月板橋区教育委員に就任。『朝日新聞 EduA』においてお悩み相談回答を不定期連載中。

学校長 善本 久子

Profile

鎌倉女子大学教授から本校校長就任。愛媛県出身。東京大学卒。都立高校教諭、東京都教育委員会勤務を経て、都立白鷗高等学校・同附属中学校統括校長として、ダイバーシティ教育に取り組み、コロナ禍において、いち早く先進的なハイブリッド型オンライン授業を推進した。中央教育審議会第9期委員、文化審議会国語分科会委員等を歴任。東京都公立中高一貫教育校長会初代会長。2024年7月板橋区教育委員に就任。『朝日新聞 EduA』においてお悩み相談回答を不定期連載中。

 2024年、校長として着任した時に感じた生徒たちの第一印象は、明るく活発、そして伸びやか。すれ違った時に気持ちよく挨拶をする表情や、校長室に来て臆することなく意見を述べる姿が頼もしく、学校が「少しの努力で越えられるハードル」をそこかしこに準備すれば、自分たちの力で学びの成功体験を積み成長していける、無限の可能性を感じました。

 予測不可能なVUCA時代を生き抜く力を育むべく、本校では、創設者である山崎種二の建学の理念を体現し、「米・金融・芸術」をテーマに新たな学びを展開します。

 ではなぜ今「米」か? 米は私たちの生活に根ざし、日本の文化でもあります。日本の農業の未来は厳しく、食と農は、今後世界的な社会問題となることが予想され、米一粒は世界を見通すことにつながります。富士見にはグローバルな学びが数多く用意され、日本の文化を基盤に世界に発信できる力を育てたいと考えています。

 「金融」は女子にこそ必要な教育です。本校の目指す「社会に貢献できる自立した女性の育成」のためには、社会の血液である金融や経済のしくみを知り、自分の持てるお金と欲望を適切にマネジメントする力が大変重要です。同時に、お金を自分だけでなく他者の幸福のためにも生かすことのできるマインドをもつ人に成長してほしいと願っています。

 本校には、400点を超える美術品があり、校内の至るところで本物の「芸術」に触れることができます。他校では学ぶことのできない日本画の創作などを通じて豊かな情操を育み、中高の多感な青春時代に心も体も健全に成長できる環境が整っています。

 そしてもちろん、生徒にまっすぐ真摯に向き合う教師が本校にはいます。創設者の想いを継ぎ、教職員が一丸となって新たな取り組みにチャレンジすることで、富士見の学びはさらに厚みを増していくことでしょう。

 5年先、10年先の未来を見据え、本当に必要な学びを提供できるように、これからも生徒一人ひとりと真剣に向き合い続けたいと考えています。

第77回高校卒業式における学校長式辞 令和6年度(2024年度)

 学校法人山崎学園富士見高等学校第77回卒業式にあたり、ご来賓の皆様、保護者の皆様のご臨席をたまわりましたことを、はじめに高いところからではございますが、厚く御礼申し上げます。

 卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんの誇りに満ちた姿を見るとき、本当に感慨深いものがあります。

 皆さんは縁あってこの富士見で学び、「純真、勤勉、着実」の精神のもと、たゆまぬ努力で確かな学びを獲得し、悩みや葛藤の中にも生涯忘れえぬ思い出やかけがえのない友を得たことと思います。そしてそれぞれが自分の進路を切り拓き、今日新しい道へ踏み出します。

 思い返せば、皆さんの中学入学から約1年後の2020年春、富士見だけでなく、日本のすべての学校、社会が一変しました。コロナ禍という誰もが予想だにしなかった感染症の拡大で、最初は学校に登校することさえできず、学校再開後も伝統であったあらゆる学校行事が中止を余儀なくされました。皆さんの富士見での6年間の前半は、ウイルスとの闘いとなり、共に語ることや食べることや笑うことさえはばかられるような日々でした。あらためて未知のものに対して私たちの社会がいかに弱いかということを思い知らされました。ビッグデータをもとに判断するAIも結局未知のものには役に立ちません。このような時こそ、人間の叡智が問われます。ゼロから仮説を立てて行動し結果に責任をもつ。これこそが人間にしかできないことだと思います。未曾有の感染症は皆さんにとって、また学校にとって大変厳しい試練でしたが、それらを経た今、皆さんには、これからの時代を生きる上での多くの新たな学びがあったと信じています。

 富士見は探究的な学びを通じて、自分と向き合う力、人と向き合う力、課題と向き合う力を育ててきました。その学びはコンピュータの中だけにとどまらない、体験し行動する力となって皆さんを成長させたと思います。AIのできないことの最たるものは「共感する」ということです。自分以外の他者に対して共感を抱くことは人間にしかできません。私は富士見の生徒の皆さんが、高い共感性をもっていることを日々の学校生活で感じます。そばにいる人を思いやること、遠くにいる誰かにシンパシーをもつこと、この温かさが富士見の良き文化です。どうか卒業後も自らの幸せを追求しながら他者に対しても共感をもって日々を過ごしてほしいと願っています。

 同時に、皆さんには世界に出て堂々と自分の考えを主張できる人でもあってほしいと思います。皆さんが富士見中学校に入学した直後の2019年5月1日に、令和の時代がスタートしました。「令和」という元号が最初に発表された時、海外のメディアは令和の「令」を命令、オーダーの意味を表す言葉だと報じました。実際には「令」という文字は、日本の古典において「美しい」や「良い」という意味を表します。なぜこのような誤解が生じたのかといえば、発表の際に、同時に公式に英語での解説を発表しなかったからなのです。

 日本は島国という地形の特色もあり、どちらかというと内向きで、自分たちの立場を声高に主張しない傾向があります。しかしこれからの時代は、自らの考えを堂々と世界共通言語と言える英語で言葉にし、議論を交わすことが必要になります。言葉にしなければ理解を得ることは難しいからです。皆さんはそれができる人々になってほしいと心から願っています。謙虚さは日本文化の美徳でもありますが、それが相互理解を阻むものであっては残念です。他者を知り、他者の異なる考えを尊重しながら、自らも発信し他者の理解を得ることのできる人に成長してほしいと思います。

 富士見は女子校です。そしてこれからも女子校であり続けると思います。皆さんは富士見に在学中、女子の役割というような固定概念にとらわれることなく生活ができたはずです。男性の視線という他者による承認ではなく、自分自身の存在の意味を考え、重い物も自分で持ち、リケジョや女子力などという言葉が飛び交うことのない学び舎で、自分の興味関心にしたがって自分の道を追求してきました。そしてこれから皆さんが羽ばたいていく社会では、もしかしたら思いがけず富士見では感じることのなかった壁にぶつかるかもしれません。でも覚えていてください。確かに男女には生物学的に違いがあります。でもそれは平均の違いにすぎません。平均は誰のものでもありません。皆さんは平均の人生を生きるのではなく、かけがえのないたった一人の人生を生きるのです。「こうあるべきだ」という固定概念にとらわれ過ぎない方が誰もが生きやすい社会になります。どうかしなやかな心で壁を乗り越え、新しい時代を築いていってください。日本のジェンダーギャップ指数がいつまでも先進国最下位の社会であってほしくはありません。富士見の教育目標は変わらず、「社会に貢献できる自立した女性の育成」だということを忘れないでください。

 さて、保護者の皆様、本日はお子様のご卒業誠におめでとうございます。これまで深い愛情でお子様の成長を見守ってこられた皆様にとりまして、今日の佳き日は、本当に節目の時でもあり、大きな安堵と喜びの日であろうと拝察いたします。これまで生徒の皆さんと過ごしてきて、その明るく活発な姿に私の方が救われる思いを抱くことがたくさんありました。これも保護者の皆様の慈しみのたまものと感服いたします。これまで本校の教育方針にご理解とご協力をたまわり、本当にありがとうございました。また、ご来賓の皆様をはじめ、近隣の皆様には、本校の成長を温かく見守っていただき、多くのご声援をたまわりました。あらためて深く御礼を申し上げます。

 今皆さんは、卒業して新天地へはばたく喜びと共に、別れの寂しさを感じてもいることでしょう。富士見は、創設者である山崎種二先生が、生き馬の目を抜くビジネスの世界の厳しさを癒やしてくれる存在として、日本の美術を愛好されたことから、まるで美術館のように校内の至る所に美術品がある学校です。この美しい場所とここでの学びをずっと覚えていてください。そして富士見の良き伝統であるひたむきな学びをどうかこれからも続けていってください。生徒としてはお別れですが、同窓会である「富士見の里」を通じて、これからも本校に心を寄せてくれると期待しています。歴史と伝統ある富士見の卒業生としての誇りを胸に、飛び立つ皆さんを見送り、富士見はこれからもずっと皆さんの母校としてここにあり続けます。どうか皆さんのこれからの人生が幸せに満ちたものでありますように。

 卒業生の皆さんの健康と幸せを願い、また本日ご列席の皆様の益々のご健勝とご発展を祈念し、私の式辞といたします。

 

令和七年三月十五日

学校法人山崎学園
 富士見高等学校長 善本 久子

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