学校法人山崎学園 富士見中学校高等学校

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開校記念日に寄せて

開校記念日に寄せて

 本日4月21日は開校記念日のため休校です。学校で友達や先生と会うことが依然として叶わない今、「休校」と言われてもピンとこないことでしょう。本来は特別な日なのですから初めに学校の成り立ちについてお話しするべきですが、今日は皆さんにとって、今、一番大切なことについてお伝えします。それは、皆さんの「心身の健康」です。皆さんとご家族の皆さまはお変わりなくお過ごしでしょうか? 毎朝体温を測って身体の変化には気を付けていると思いますが、見落としてしまいがちなのが心の状態です。長らく新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐために家にいる努力をされていると思います。これは家族全員の命を守る上でとても重要な行動です。しかし、この状況下は今までの日常と異なります。限られた空間に長期間いることから心が苦しくなってしまっても不思議ではありません。「この先どうなってしまうのだろう」、という漠然とした不安は、身体を平常状態に保つために大事な機能である自律神経に作用し、その中でも交感神経を刺激します。交感神経が優位な状態は「闘争逃走反応」とも言われ、その状態になると人を含めたすべての動物は戦いモードに入ります。つまり小さなことにもピリピリしがちになるので、その結果イライラしやすくなってしまうのです。大人も子どもも同じ状況になります。特に変化が無ければ良いのですが、もし少しでもピリピリ・イライラモードになりそうでしたら、早めの心のメンテナンスを心がけてください。
  一つお勧めの方法を紹介します。それは、目の前のことから心の距離を取ることです。「家の中で距離なんて取れない!」いえいえ、タオル一つあれば大丈夫!椅子でも床でも良いので座ってください。そして顔にタオルをかけて上を向きます。肩や首の力を抜き、ちょっとぐにゃっとする感じになって息をふぅーっと出します。肺の中の空気をすべて出すような意識でながーく出せるとより良いですよ。周りの音などに惑わされず、自分の呼吸にできるだけ集中してくださいね。そう、この状態で深呼吸をするのです。よく深呼吸というと息を吸うことに意識を向けがちですが、吸うことは考えずに吐き出すことに集中し10~15回続けます。これだけで自律神経の戦いモードである交感神経優位から副交感神経優位に転換できます。このリラックスモードになると、イライラや不安が軽減され免疫にもプラスになる身体の状態に変えられるのです。これは以前私が心理士として大学病院に勤務していた際に不安障害の方などにお伝えしていたとても効果のあるお手軽リラックス法ですのでぜひ試してみてください。

  さて、リラックスして頂いたところで少し開校記念日にまつわるお話をしましょう。学校法人山崎学園の創立者山崎種二は「富士見高等女学校」を立て直し、「富士見中学校高等学校」を1940年5月に創立しました。初代校長の深井鑑一郎とともに社会に貢献できる聡明な女性を育成するために尽力し、今年5月で本校は創立80周年になります。では創立が5月なのになぜ4月21日を「開校記念日」としているのでしょう? それは96年前、1924年の今日は学校法人山崎学園の前身である「富士見高等女学校」が開校した日だからなのです。創立者山崎種二は本校の祖に敬意を表して、4月21日を開校記念日として大切にしました。ご恩を忘れず人を大切にする種二の気持ちが如実に現れているエピソードとして本校では今に至るまでこの日を大事な記念日にしています。
  山崎種二とはどんな人物だったのでしょう?彼は決して最初から裕福で順風満帆な人生ではありませんでした。尋常小学校を卒業してすぐ親戚の米問屋に丁稚奉公として出されました。今の中学3年生くらいです。米俵が山と積まれた暗い倉庫に寝泊まりしながら来る日も来る日も小僧としての下働きと主人の身の回りの世話をしたのです。想像してみてください。皆さんなら耐えられますか?もし私ならしーんとした暗い倉庫の中で一人で寝ることになっただけで泣いて逃げ出していたでしょう。でも種二は違いました。徐々に「今、何ができるだろう?」と考え始めたのです。倉庫の掃除をすると米俵からこぼれ出たお米が少しずつ集まります。主人に許可を得て、そのお米を一粒一粒きれいにして集めました。 当時倉庫にはネズミが出ていました。そのネズミを捕まえて保健所に持ち込むと一匹2銭(現在の400円くらい)で引き取ってくれたのです。種二の後の成功は、この集めたお米とネズミから得たお小遣いが始まりでした。
  人生には自分ではどうしようもない状況に放り込まれる時があります。その時に、少し立ち止まり「ここで何ができるかな?」と工夫する種二の思考は現代の私たちにも得るものがありそうですね。皆さんのこれからの長い人生において、どのようなことが待ち受けているか誰にもわかりません。残念ながら不本意なことと無縁な日々を送れる人はほとんどいないでしょう。今回の自宅待機の生活も見方を変えて工夫することによって未来に役立つものにすることができるかもしれません。先生方が日々懸命にチャンレンジしているので、皆さんにはオンライン授業という新しい取り組みをスタートして頂くことができました。先ほどお伝えしたイライラをリラックスに転換する方法もいつか役立つ時が来るかもかもしれません。
 富士見中学校高等学校の主役である生徒の皆さんがいらっしゃらない校内は閑散として寂しい限りです。しかし再開したときにすぐに日常に戻れるよう学校として最大限の安全に注意しながら先生方、事務の方々、用務さんなど皆でそれぞれができる限りの準備をしています。校長もたくさんのメッセージを出しています。元気な皆さんに早く会えることを心から願っています!

                                山崎学園富士見中学校高等学校  理事長 山崎 二三恵