2025年09月17日(水)

ル・トレポーの窓
藤本 東一良(1913-1998)
西館1階 応接室前
遠い異国の港町へ心を誘う作品
西館1階。少し奥まったところに潜む絵画が、私の心を一目で奪う。
この作品の舞台はフランスの小さな港町、ル・トレポー。遠い遠い異国の地だ。
目を閉じると、私はいつの間にか小さなアパートの窓辺に立っている。
今の季節は夏。ベランダの床に柵が反射しているから、きっと夜にふった雨で水たまりができたのだろう。
灯台の方を見れば、微かに暗雲が立ち込めている。時間は早朝。部屋の中にゆるりと入りこむ潮風の匂いと音が傍で感じられる。
外に出たい思いが強まり、思わず一歩踏み出してしまう。
目を開けたら香りは絶えず周りに漂っていて、眼前には美しい絵画が息づいている。
見知らぬ地に思いを馳せるたびに、それだけでその日が明るく、麗しいものに思えてしまう。
私にとってこの絵画は、日々に鮮やかな色彩を加えてくれる存在なのだ。それはきっと多くの人にとっても同じ。
この作品に出迎えられた来校者は、一瞥するだけで描かれた自然の美しさに心を奪われるに違いない。
きっと、それに感化されて一日中晴れやかな気分に塗り替えられてしまう。
そしてさらに、私のように偶然通りかかった生徒には、部屋の外に、外の世界に飛び出してみたい。
そんな挑戦意欲をかきたててくれるのだ。
来校者の目に触れる機会が多いのに反して、生徒が目にする機会は少ない場所である。
それでも、この作品がわたしたち生徒に与えてくれるもの考えれば、この立地は全く素晴らしいものと言えるだろう。
この文章を読んでいるあなたがいつか富士見を訪れた時は、是非この世界を探してみてほしい。
高2生徒 K.H