2025年05月21日(水)

パリ郊外
浮田 克躬(1930-1989)
本館2階 大階段上
大階段上にある、大きな作品
この作品には、灰色の空と崩れた建物が描かれており、全体的に暗い雰囲気が漂っています。私たちは、この暗さの原因は「戦争」ではないかと考えました。その理由は、主に3つあります。
一つ目の理由は、作品に人が描かれていないことです。私たちは「パリ」と聞くと、華やかでにぎやかな街をイメージします。しかし、この作品には人の姿がまったくなく、強い違和感を覚えました。これは、人々が戦争に出征したり、爆撃から避難していたりする状況を表しているのではないかと思いました。
二つ目の理由は、絵の右奥に描かれている壁のような構造物が、「ベルリンの壁」を連想させることです。ベルリンの壁は1961年から1989年まで存在していましたが、この作品が描かれたのは1987年から1989年の間です。つまり、壁が崩壊する直前に制作されたことがわかります。さらに、壁の奥にはエッフェル塔が描かれているため、この作品は「ドイツから見たフランス」を表しているようにも感じました。壁の周辺が特に崩れたように描かれていることから、私たちは、壁によって引き裂かれた家族や亡くなった人々の悲しみが表現されているのではないかと考えました。
三つ目の理由は、建物の描写にあります。作品に描かれている建物には凸凹があり、絵の具を厚く盛ったり、削ったりする表現技法が使われています。こうした技法により、建物が戦争によって傷つけられた様子が表されているように思いました。
この作品は、富士見の大階段の上に展示されているため、私たちはこの通路を日常的に通ります。二年以上の歳月をかけて細部までこだわって制作されたこの迫力ある作品に、私たちは通るたびに心を動かされ、驚かされるのです。
中1生徒 N.A I.K M.T